2017年05月13日

『永い言い訳』『湯を沸かす程の熱い愛』@ギンレイホール

『永い言い訳』と『湯を沸かすほどの熱い愛』の二本立てを、飯田橋ギンレイホールで観てきた。

どちらも、水準以上の映画で楽しめた。

でも、それで?という感がしないわけでもない。

ネタバレあるので、注意してくださいな。

『永い言い訳』は、本木雅弘の演技が良かった。中盤まで、エゴイスティックで嫌な奴を演じるようにという監督の注文に見事に答えているのがよくわかった。後半から、嫌味がなくなって、なんでこんな下手な俳優使っているのかね、という感情が徐々に消えてしまったのは見事。前半、嫌な奴、演技が素人っぽいギクシャクしたもの→後半、普通の人、自然な演技という流れがよくわかりました。

妻役の深津絵里は、冒頭の大切なシーンのあと、すぐに死んでしまうので、出番はないのだが、主人公の本木雅弘との二人の関係をセリフだけで説明して、こちらが映像を見て二人の関係をそれ以上に想像させることを拒否させるという監督の指図どおりうまく演技していた。

家族という居場所のないDINKSの二人が、一人はバス事故で死に、一人は、家族ごっこを経験して、自分の居場所を確認するといった内容の映画だった。

もう少し言うと、アイデンティティの問題であるのでしょう。

衣笠祥雄という広島東洋カープの有名選手と同じ本名と作家としてのペンネームを持つ主人公。

この2つの名前を行き来して、本当の自分を本木雅弘は見つけ出せたのか?

この2つの名前がどのように使われているかを注意深く映画を見ると、なるほどね、ということになるはず。

監督が原作者でもあるので、安心して話の内容を確認はできるが、映像的な表現があまりなかったかね?

というわけで、映画自体の陰影を深く感じることはできなかった。でも、話自体は興味深いので、もう一度観たいと思わせる映画でした。

『湯を沸かすほどの熱い愛』は、脚本主体の映画だったと思われる。

複数の伏線が、あれま!とつながる快感はあるものの、木を見て森を見ずの感が無きにしもあらず。

余命2ヶ月と宣告された母が、娘と蒸発した夫になすべきことをなして死んでいくというストーリーである。

伏線は、

なぜか、娘に、彼氏のために勝負下着をプレゼントする。

なぜか、娘の誕生日に、タカアシガニが送られてきて、娘にお礼を書かせている。

なぜか、その娘は、手話ができる。

なぜか、夫に、エジプトへ行ってみたかったと話す。

なぜか、娘に、自分は赤が好きと話す。

まだまだ、あったかもしれないが、こうした伏線がすべて繋がり、涙腺を刺激するのではある。

ところで、この話の舞台は、銭湯を経営している一家の物語なのではあるが、その必然性は、衝撃的なラストを描きたいから設定されたような気がする。

脚本があり、その伏線の落ち着く先を見せたいから、銭湯を描いているのだね。

まあ、よくできた脚本(アイデア)だと思います。

うん、そうそう、脚本というか、素晴らしいアイデアなんだね、この映画の素晴らしいところは。

すべてオリジナリティがある。

が、このオリジナリティあふれるアイデアを羅列しただけでは、優れた脚本にはならないので、様々な趣向で伏線をうまく隠すことも成功しているんだね。それでも、やはり、話の筋に無理がある。

その無理が、宮沢りえ、オダギリジョー、その娘達の卓越した演技でリアリティを与えているので、ほとんど目立たなくなっているのが、この映画の成功の基礎となっておる。

男優賞、女優賞総なめになるんじゃないかなとは思いますがね。特に、娘さんの演技が秀逸。

違和感を持ったのは以下の通り。

自分の生みの母親に突然会わされた娘が、すぐに過去のわだかまりを克服して、なかよく余命2ヶ月で死にゆく育ての母親と共に仲良く暮らしていけるものでしょうかね?

また、オダギリジョー扮する夫も異常な男ですね。これだけ、何も感じない男もいないでしょう。

娘のいじめは、なくなったんでしょうか?勝負下着だけで、解決したんでしょうか?何も、映画では音沙汰が無い。

宮沢りえ扮するお母ちゃんの歴史というのも、生き別れた母親がいるというだけで、説明がない。そして、この母親を探し出して、会いに行ったところ、そんな娘はいないと会うことを拒否されてしまう。つまり、この映画でたったひとりだけ、血の繋がった親兄弟がいないのが宮沢りえなのですね。

そうであるのに、夫の連れ子である娘達を一生懸命育てて、しかも、前妻と娘を仲良くさせて、その仲睦まじい姿を見て、いったいどう思うのか?まったく、説明されていない。

つまり、そのあたりの微妙な登場人物の立ち位置というものが、まったく描かれていないわけで、この点がとても不満で、残念なところでした。

ラストは、とてもグロテスク。こんなラストでいいのかよ、趣味悪いなあと思ったんだけれど、皆さん、涙してました。

監督には、もっと人生勉強を積みなさいといいたいところ。才能はあるので、また次に期待しましょう。テキパキとつくるだけが映画じゃないものね。

そんな映画でした。

あと、宮沢りえ痩せすぎ。体重増やすべし。この映画では余命2ヶ月ということで良かったけれど。

posted by ロビオ at 04:41| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする