2017年05月09日

ワイルド・バンチ

サム・ペキンパーの『ワイルド・バンチ』を劇場で見ていて感じたのは、このワイルド・バンチのチームのメンバー全員が、運命のごとく最後の不毛な戦いの場に赴くように仕向けているものは何だったんだろうということだった。

仲間の一人が、メキシコの国軍に捉えられてリンチをされている。仲間を助けるために、120人もの兵隊とたった4人で戦って彼を連れ戻そうなんて考える連中ではないことは、最初の銀行強盗でまだ若い男(仲間の孫だとあとで分かる)を、見殺しにしてなんとも思わないし、子供も一般人も自分たちのいく手を遮る連中には鉛の玉を打ち込むのに躊躇しない。

また、目を負傷して足手まといになったものには、殺してその場に置き去りにしてしまうような連中だ。

メキシコ人の付き合いも浅い仲間を自分の命を賭してまで助けようと思うことすらないような気がするのだ。、

これは、善とか悪とかの問題ではない。

善とか悪とかを超えている。

印度哲学を勉強している身からすると、前世で溜め込んだカルマを今世で摘み取ることを運命的な力で彼ら自身どうしようもないほどの暴力的な力でそうすることを余儀なくされているという風に解釈すると合点がいったのだった。

人は、しなければならないことをしなければならないという責任を負っている、前世のカルマの命じるままに。

人は、その責任を果たすために、自分自身を捨てて、その行為の結果を考えることなく、やり抜かなければならないのだ。

彼らにとって、そのしなければならない行為というのが、兵隊を殺して自分も死ぬということだったに違いない。

人質を助けることによって、自分が良いことをしたとか、人質が生きながらえてよかったとか思うことは、どうでもいいことなのだ。

人質が助かろうが死のうが問題ではない。

また、自分たちが生きようが死のうがそれが問題なのではない。

やむにやまれぬ原因に動かされ、そしてその結果を待つ。

お金はたっぷりとある。このまま、この場を去れば、ウイリアム・ホールデン扮するリーダーも現役を引退して農場で暮らすという夢を実現できるかもしれない。

しかし、それは許さない。彼は、120人のメキシコ人を殺し、自分も死ななければならなかったのだ。

売春宿でメキシコのセニョリータと寝たボーグナイン他の3名。

事を終えても、心は安らかではない。やり残したことがある。

売春宿の外で、ナイフで棒切れを削ぎ落としてオブジェみたいのを作りながら彼らが出てくるのを待っているボーグナイン。

明らかにホモセクシュアルだ。

リーダーのウイリアム・ホールデンがこの映画で3度目に言う台詞、「Let’ go」。

ウォーレン・ウォーツが答える「Why not」

それは、やり残したこと、それは、死に行くということなのだ。

若い人質を取り返そうと、ライフル銃を肩に背負いながら、メキシコの将軍に会いに行く。

彼を返せと要求すると、将軍は、半殺しにされている人質を立たせ、その喉を掻き切って殺してしまう。崩れ落ちる人質。その瞬間、ウイリアム・ホールデンは3発その将軍に弾丸を打ち込む。

ライフルの銃声が高く響き渡った後の沈黙。王様である将軍が殺されたことがショックで、軍隊も唖然として行動することができない。永遠と思えるような沈黙が続く。

「地獄の黙示録」で、ウィラード中尉がカーツ大佐を殺戮した後の原住民の沈黙は、このシーンからとられたのかもしれない。

新しい王の誕生だ。王権の交代という神話的な場面に太古の記憶が呼び起こされた沈黙だ。しかし、その王権は長続きはしない。

「さあ、これで、やっとここで死ねる」と思い、アーネスト・ボーグナインがにやりと笑う。ここで、もう引き下がることができない線を超えてしまったのだ。

ここから、「死のダンス」と呼ばれるほどのカット割りとスローモーションで、メキシコ軍と4人のワイルド・バンチの死闘が続くのだが、これが、迫力満点で、これを超える戦闘シーンは、スピルバーグの「プライベート・ライアン」くらいのものか?

機関銃を振り回して暴れるウイリアム・ホールデンに致命傷の被弾。「死ぬな!」と叫んでホールデンに触れようとするボーグナインも致命傷を浴びて絶命。きっと、来世で男女に産み分けられる二人の男。

死に絶えたウイリアム・ホールデンのガンベルトのコルトのリヴォルバーは、西部劇時代の象徴であり、そのガンがクローズアップされて、象徴的に、時代に取り残された男の死を演出する。

俺より先に死に行くなという意味だろう。「俺が死ぬまで待ってろ」という意味だろう。

結果の後先を考えずに、ただ、やることをやる男たちの神々しさ。

久しぶりに見た傑作『ワイルド・バンチ』でした。これは、劇場で見ないと迫力が随分と違う。新文芸坐さんがやってくれました。併映は、ハードホークス監督の『リオ・ブラボー』。これについても、あれやこれや、書きたいけれど、気分が乗ったときに書いてみましょう。

posted by ロビオ at 16:43| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする